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2012/06/22 エルンストの鳥の次は、若冲の鶏
そごう美術館で「琳派・若冲と雅の世界」を観てきました。
京都の細見美術館の収蔵品展で、
タイトル通り琳派&若冲作品が目玉ですが
他にも仏画、絵巻物、能装束、蒔絵細工など
ゴージャス作品が並んでいて眩しいです…

なかでも衝撃的だったのは、
住吉如慶という絵師による「きりぎりす絵巻」という
擬人化した虫たちの婚礼図を描いた巻物。

きりぎりすの花嫁の従者(もちろん虫)は馬でなくカエルに跨がってるし、
牛車は、牛の代わりにナメクジが引いている。牛車ならぬナメクジ車…。
繊細で柔らかい筆致と彩色でありながらも
はっちゃけぶりが感じられ、
これは当時どういう読者層に向けて作られたのか、
非常に気になる作品です。



お目当ての若冲屏風を凝視したあと、
「鶏図押絵貼屏風」のスピード感溢れる筆致のワイルドバージョン鶏と、
おなじみの精緻バージョン鶏「雪中雄鶏図」のカードを購入。
きりぎりす絵巻のカードもあればなーと思ったけど、なかった…

4年後の2016年は若冲生誕300周年の年だそう。
なにか大々的な展示があればいいなー

2012/06/15 エルンストと鳥
横浜美術館で「マックス・エルンスト フィギュア×スケープ」を観てきました。
自分にとってのエルンストはやはりシュールなコラージュ作品のイメージが強く、
それを期待するところもあったのですが、
この展示はシュールレアリストという枠からではなく
「フィギュアと風景」という視点から
エルンスト作品を捉え直すというテーマのようです。

鳥が重要モチーフとして作品に頻出していますが
(ロプロプという名の鳥キャラもいる)、
その理由を今回の展示で初めて知りました。
飼っていた鳥が亡くなった翌朝、妹が誕生したというエピソード。
魂の交代かなにかのようなこの出来事から、
エルンストのなかで鳥が神秘の象徴として
位置づけられることになったのでしょうか。



やはり鳥がモチーフのコラージュ作品のポストカードと、
コラージュ小説三部作のうち二作目の
「カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢」を購入。
「百頭女」「慈善週間」も揃えたい…

2012/06/08 東博で等伯、蕭白、若冲!光琳も光臨。
ボストン美術館 日本美術の至宝」を観に
上野の東京国立博物館に行ってきました。

会期終了直前のため大変に混んでいて疲れきりましたが、
「奇想の系譜」の表紙を飾る、曾我蕭白の雲龍図の実物を観られてご満悦。
伝説的変人っぷりが伺えるアクの強い筆致、
とくに尾周辺の波の表現が独特で、
有機的であると同時に金属的な印象も受けるSFテイスト。

お寺の襖絵だったらしいというこの龍図、胴部だけが所在不明らしい。
頭部と尻尾部だけでも相当な迫力だけどやはり全体像が観たい。
いつか観られる日がくればいいのだけれど…。

これまた凄い迫力の「大威徳明王像」と「馬頭観音菩薩像」のカードも
ミュージアムショップで購入してさらにご満悦。



しかし2年ぶりくらいに上野に行きましたが
公園がなんだかスッキリきれいになっててビックリ。
ブルーシート地帯だったはずの噴水側はおしゃれカフェとか建っているし、
駅ナカにもお店が建ち並んで
多種多様なパンダモチーフ菓子などが売られており、
浦島太郎気分を味わいました。

2012/01/21 イラレの女神
「『ヴィーナスの誕生』-視覚文化への招待」を読了。

メディチ家の時代からずっと人の心を魅了し続けている
ボッティチェリの名作「ヴィーナスの誕生」と「」とをメインに、
当時の文化と絵画の関わりかたを考察する手引きをしてくれる一冊です。

平易で優しい語り口で綴られていて、
良い意味の現実逃避をさせてくれるウットリ本。
春の麗らかな天気になってからロゼワインをお供に読んだらピッタリだったかも…

最初の章は、両作品のモチーフであるギリシャ神話を引き合いに
絵の中の暗喩に対する意味付けや解釈を紹介。

中盤からはイコノロジー的観点を超え、
祝祭文化・視覚文化というキーワードを軸に、
仮装行列、宮廷恋愛、馬上槍試合など当時の暮らしの中での
絵画の位置づけを俯瞰的に見せてくれます。

「春」は当時から豪華な額に収まって恭しく壁に飾られてたのかと思いきや、
長椅子の背板に使われてたという記録があるそう!
その長椅子で語り合ったのか読書したのか昼寝したのか、想像が広がりますが、
いずれにせよ贅沢です。



「ヴィーナスの誕生」の使い道のほうは諸説あるものの今のところ不明らしく、
当時どんな楽しみ方をされていたのか妄想するもまた一興。

現代ではソフトのIllustratorのイメージキャラ(と言っていいのか)としても
身近な存在でしたが、
これから未来にまたどんな形でボッティチェリのヴィーナスが降臨するのか
楽しみでもあります。
でもホタテのパッケージにだけは使われないでほしいです…


2011/07/31 春のパン祭りが終わったら夏のパンク祭り
米国のパンクフェスWARPED TOURのコンピレーションはカッコいいジャケが多い。
LISA JOHNSONというロックフォトグラファー(なんというステキ職業)の作品だそう。

04年版はRANCID、
WARPED TOUR04

05年はANTI-FLAG、
WARPED TOUR05

どちらも流石のカッコよさですが
09年版はちょっと毛色が緑色…いや毛色が違います。
とはいえNOFXらしさがよく表れた一枚です。
エル・ヘフェ見事にカメラ目線だし…

WARPED TOUR09

この09年版から良い曲ちょっとご紹介。

"NEW DARK AGES" : BAD RELIGION


"I'm made of wax, Larry, What are you made of?" : A DAY TO REMEMBER


特筆すべきはPOUR HABITの"Institution"。

パッと見パンクバンドっぽくなく見える彼らですが(失礼)、
スピード、パワー、テクニック、メロディ、ディティール、すべて申し分なし!
この"Institution"を収録している1stアルバムを聴いて
イイ曲多いなーと思ってたら、
4月に出た2ndでは全曲カッコいいという素晴らしき事態になっていて驚愕。
今一番期待しているバンドです。


でもやっぱり自分的第一位はNOFX
Mikeの声質が好みすぎる!
所謂ヴォーカリスト向きな声ではないところが、
却ってこのバンドの魅力と独自性、唯一無二感を高めている。

初期の頃は裏返りそうな不安定さも感じられたけど
97年あたりからか、確信に満ちたような不思議な迫力が出てきて
今や実績と信頼のダミ声。

しかし「ダミ声」って言い方だと
まるでけなしてるみたいで誤解を招きそう。賛辞なのに。
ダミ声の肯定的な言い回しってあるのでしょうか…。
ハスキーボイスとはまた違う種類な気がするし。

2011/07/01 魅惑のモダニスト 蕗谷虹児展
蕗谷虹児展を観にそごう美術館へ。

なぜかどこかホラー的な退廃耽美な空気がある画風で、
当時のカストリ雑誌や猟奇小説の挿画に
もしもなっていたとしても不思議でないという印象も一瞬受けますが、
蕗谷レディたちはあくまでも妖精のように優美で清廉、スマートでファッショナブル。

憧れの1920年代、モガの時代の、繊細で華麗なモノクロ線画が好き。
ビアズリーからエグ味を抜いて可憐さを足したような美しさ。
展示点数が400余と大変多く、アニメ作品も上映されていて充実した展示です。

蕗谷虹児

2011/06/30 五百羅漢 幕末の絵師 狩野一信
狩野一信の五百羅漢展を観に江戸東京博物館へ。

昔、本で初めて見た一信作品は「第五十三幅 神通」。
首を吊った女の屍を羅漢たちが葬ろうとする場面で、
その死顔が容赦なく醜悪に描写され強烈なインパクトがあり、
禍々しき特異な仏画というイメージを持っていた。

しかし今回通して観ると、濃厚な画風でありながら
ユーモラスでもあり、エンタテイメント性の強さを感じた。

お髭剃ったりディベートしたり、猛獣たちと遊んだり、竜宮城に行ってみたり、
もちろん悪鬼も退治し仕事も完璧。と羅漢様の大活躍っぷりが
スペクタクル映画のように繰り広げられ、
教義性と娯楽性の両立がやたらエネルギッシュに果たされています。

漫画の吹き出しのような表現や、西洋画的な陰影の付け方など、
画家としての挑戦心がビシビシに感じられ面白すぎる。
鉢に入った小さな龍や、双頭の天女、ギリシャ神話の百目男のような鬼、等々
ディティールまで奇想が炸裂。

しかしどこまでが原典に由来するもので、どこからが一信の発想によるものなのか、
教養がない自分には判別できないのが残念。
ちょっとこれを機会に勉強すべきかもしれんと反省…

フライヤーに掲載されているのは、お腹を開いて仏の姿を見せる羅漢様の図。
驚愕したり拝んだり茸(?)を供えたりするお猿や鹿たち。
そして何よりもこのお顔… 濃い…

五百羅漢

これだけの超大作が今まであまり世に出ていなかったというのが謎ですが、
1970年代における若冲再評価の気運と同じことが
今起きているのではないでしょうか。
今後、一信研究が進み他の作品が発掘され公開されることを願ってやみません。

2011/04/28 HED KANDI ANTHEMS & ARTWORK
CD4枚+画集という夢のようなHED KANDIベスト盤を購入。
HED KANDIシリーズはできることならコンプしたいくらいだけど
あまりのハイペースリリースについていけない自分にとっては
今回のベスト盤はありがたい。(でもやっぱりコンプしたい…)

ジャケ絵はJASON BROOKS氏。
私の一番好きな、一番尊敬しているイラストレーターです。
イラスト界の現人神として崇め奉って早十数年…、
現在に至っても一ミリも近づけていません、当然ながら。
画集を日々凝視して更なる精進を肝に銘じたいと思います。

収録曲のほうも、ANTHEMの称号に相応しい名曲が揃い
厚いハードカバー本みたいなカッコいい体裁で、
書棚より神棚に飾っておきたいくらいです。神棚ないけど。

HED KANDI ANTHEMS&ARTWORK

思い起こせばJASON BROOKS作品との出会いは
『fly -the art of the club flyer』(1996)というフライヤー集の洋書で
紹介されていた数ページに於いてでした。

fly
"fly"裏表紙とJASONポストカード

その後HED KANDIシリーズが出たときには
選曲とジャケとの完全なるマリアージュぶりに激しく感動。
さらに、『ファッション・イラストレーション・ナウ』(2000)で
白いソファに座る黒い服の女性の絵を見て、感動は確信へと深化。

fashion illustration now
"ファッション・イラストレーション・ナウ"裏表紙と2001年のHED KANDI

このとき既に自分の中で、BROOKS作品は
遥か彼方で煌めきながら常に正しい方向を指し示す、
北極星のような存在に…。

それからずっと長い間憧れ続けて、
でも一歩も近づけてないことにも気づいたけど
やはり私にとって永遠の道標なのです。

2010/11/12 ファンタスティック・プラネット

過去のフライヤーの整理をしていたら
97年にユーロスペースで上映されたルネ・ラルーのアニメーション作品、
「ファンタスティック・プラネット」のを発掘。
制作自体は1973年、チェコ&フランスの合作です。



異人種の支配に対し反乱を起こす人間の話、
しかしそんな説明が不似合いで
ストーリーに言及するのが無粋に思えるくらい、詩的で美しい映像。

一応人類の敵である、青い肌に赤い目のドラーグ人と、
舞台となる惑星の描写が非常に魅惑的。
奇妙な幻覚的世界が構築されていて、
架空の博物誌のようで、現実逃避には最適です。


フライヤー裏面&ポストカード

よく引き合いに出されるヤン・シュヴァンクマイエル作品とは違った味わいで、
エグ味がなく繊細でありながら、奇想的インパクトは強烈。
ポスターデザインもかっこよくて、
それをもとにしたポストカードを大事に保存しています。

また見たいけど、DVDの販売も終わってるみたい。
後世に残すべき価値がある、他に類のないタイプの作品なので
再販してほしいものですが…。
映画も音楽も出版も斜陽産業化した今、
確実に売れる種類のものしか残らなくなってしまうのでしょうか…。

(※2013/12追記 ブルーレイで発売されたようです


2010/10/21 聖者が家にやってきた
処刑人1&2のブルーレイBOXを、発売から一ヶ月悩んだ末に購入。
これでいつでも処刑人祭りができる!と思いたいところですが
そもそもブルーレイ再生機器持ってません………

DVD版も出てるのになんでそっちを買わなかったかというと
ブルーレイ版には初回特典として
フォトブックと漫画版(画像左端)が付いてたからです。
絵柄があんまり作品に合ってないような…と思いつつもどうしても気になって。

実際見てみたところ、表紙描いてる人と本編描いてる人は別人らしい。
表紙絵が気に入った人は中を見てアレッ?と肩すかしな気分になるかもしれないし
逆に気に入らない人は中も見ずスルーってこともあるんじゃないんでしょうか。
なんか心配だ。
自分は本編の絵柄の方が好き。
内容はイル・ドゥーチェの過去シーン。facebookでもちょっと見れます
http://www.facebook.com/album.php?aid=143207&id=49876575884&saved


箱デザインもマット黒地にかすれゴールドでかっこよく、本棚に飾っておきたくなる

1作目が20世紀末B級映画の金字塔というのは
(タランティーノほどのブッチギリ度はないものの)異論の余地なしですが
2作目はファンの間でも評価が分かれるようです。
自分的には甲乙つけがたいものの
強いて言うなら2の方が好きですが、
各レビューでは主演の二人が老けた老けたと評判です。
そりゃ10年経ってるんだしなあ…。
問題はどんな年の取り方してるかです。

10年前のノーマン・リーダスはひたすらにクールな端正美形で
今はそれに迫力や凄みが加わって、
現代の俳優の中で一番男前だと思います。
耳の上にタバコ挟むというオッサン仕草ですらキマってます。

コナー兄貴役のショーンは、1作目のときは
『トレイン・スポッティング』の頃のユアン・マクレガーに似てますが
2ではなぜか柴犬に似てます。
決して揶揄しているわけではありません。柴犬大好き。
妄想シーンでの七三分けも妙に似合ってます。


ともかくこの二人が演じる処刑人兄弟は最高にアホらしくカッコよく、
「ブルース・ブラザーズ」「ロシュフォール」と並ぶ名コンビ。
配役にも決して妥協しなかったダフィー監督への尊敬の念が一層高まります。

もし無事に3作目が作られて、3巻セットボックスが出たら多分また買う…
それ以前にブルーレイ再生機器買わなきゃという話ですが
果たして一体いつになるんでしょうか自分よ…。

★トロイ・ダフィー監督による処刑人公式サイト
http://www.boondocksaints.com/

2010/06/06

【横山裕一 ネオ漫画の全記録:「わたしは時間を描いている」@川崎市市民ミュージアム

数年前、当時表参道にあったナディッフの店内で
初めて横山裕一さんの漫画を見た。
フランス版の「voyage」だった。(日本では「トラベル」というタイトル)
パラ見しただけでその際立った特異さに釘付けになった。

その後国内の出版社から廉価で出たおかげで、
今手元に「トラベル」「ニュー土木」「NIWA」と3冊ある。
どれもえらく不思議で独特で新しすぎて衝撃。
ランドスケープデザインや建築や任侠映画やSFや子供の頃の空想的なものなどの
要素を感じる世界に、
冷静な登場人物たちや謎の建造物が、非常にシャープな線で描かれている。
その的確な画力によって、奇想天外な光景でありながら強い実在感がある。

大体、異色漫画と形容されるタイプのものは、
狙ってる感が滲んでいたりすることも
往々にしてある気がするけど(←エラそう)、
横山さんの漫画にはその種の気負い等が全くなく、
恐ろしいくらい自然で淡々としていて、
そして迷いがなく空気が澄み渡っていて整然とした清潔感があって、美しい。


↑「NIWA」のカバー裏もスゴいことになっている

そんな漫画芸術家横山さんの大規模個展を観に川崎市市民ミュージアムへ。
しかも今日は悩み相談会なるイベントもあり、
事前に募集された悩みや会場からの質問に対する
非常にゴーイングマイウェイかつ竹を割ったような明解な
横山さんの回答に、約一時間半のあいだ笑い放題。

「イラストレーターとしてクライアントの要望に応え続ける十数年の間に、
自分自身の作品の方向性が定まらなくなってしまい…」というお悩みに対しては、
「商業美術と自分のやりたいことを両立しようとすること自体に無理がある」
という内容のお答えで、
うーんやっぱりそうなんかな〜とドンヨリ思っていたら
「漫画描いたらいい。漫画なら自分(の作風)が主役になれる。
日本人なら漫画描けます。」という内容のことを仰っていました。
『日本人=漫画描ける説』は、
昔の外国人の『日本人=忍者、または空手の達人説』に並ぶ位スケール大きいです。
そんな感じに豪快でスパーンとした男らしい回答が続いて爆笑です。

「お酒で記憶を失うことが多く困っている」というお悩みには
「そのうち身体を壊せば飲まなくなるから大丈夫。」と
ご自身の体験をもとに語ってくれました…
(記憶違いな箇所があったらすみません)


↑フライヤーは「NIWA」の1ページ目

相談会の後はサイン会だったけど、ものすごい人数だったため
行列に並んでたら展示観る時間なくなりそうで、サインは諦めざるを得なかった…。
閉館間際になっても行列は終わっておらず。
もっと朝も早よから出動するべきでした。

トラフ建築設計事務所の手によるカッコいい展示会場には、
作品中にも頻出するアイテム・人工芝が敷き詰められ
漫画の原画がズラーッと並び、
蛍光色を多用した非常に綺麗なフューチャリスティックな作品や
大量の肖像?画などが展示され、圧巻壮観でした。


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